原理

フェイズオーバーサンプリングの基本と+αの効果

新人くん

フェイズオーバーサンプリングって折り返し防止で使ってるけど、正直どうゆうことしてるのか分からないなぁ。。。

べこ

端的に言っちまうと、k空間を密にサンプリングして折り返しアーチファクトがでねぇようにしてるし、そんでもってg-factorもちっちゃくなる+αの効果もあんだよ~

ども、べこです。
今回はフェイズオーバーサンプリング(以下:POS)の基本的な原理とあまり意識しないg-factorを小さくする効果について解説していきます。

そもそもフェイズオーバーサンプリング(POS)とは

フェイズオーバーサンプリングとは、その名の通り、位相方向に過剰にサンプリングするんですが
その過剰にサンプリングをする仕方に特徴がありまして、k空間の大きさを変えずに密にサンプリングをする!これです。

例えば上の図のように、位相エンコード数が5本のシーケンスにPOS100%を入れると、k空間上では倍の10本になります。ここで重要なのは、間隔が変わらず10本に増えるのではなく、k空間の大きさは変わらず、間隔が狭くなり10本収まっているということです。


この間隔が狭まり・密にサンプリングするというのが、次の折り返し防止の原理やg-factor低下の理由に繋がりますのでぜひ、覚えておいて下さい!

べこ

k空間の位相方向の間隔が狭くなってるつーのがミソだな

なぜ折り返しアーチファクトが減少するのか

これはフーリエ変換によるk空間と実空間の関係を理解する必要があります。こちらをご覧ください。

決定版 MRI完全解説 第1版 P.184 図5-13-1

ああ~こんなんやったな~って人も多いんじゃないでしょうかw 

k空間が大きいほど ➡ 実空間のボクセルは小さく

k空間が細かいほど ➡ 実空間のFOVが大きくなる

といった反比例の関係にあります。

べこ

POSで密にサンプリングすっから、k空間の間隔:Δkyがちっちゃくなって→実空間のFOVがでぇっけくなって、折り返しアーチファクトがなくなんだなぁ~

POSのもう一つのメリット:g-factorの低減

新人くん

g-factorってなんだっけ・・・?

べこ

パラレルイメージングを使ったときに、どんだけ元の画像を正しく再現できるかっつー値というか因子だな!詳しくは下の記事で確認してくんろ。

g-factorについてのMRI基礎知識 新人くん g-factorって聞いたことあるんだけど、難しそう… べこ 分かるように、よくよく説明すっから、さすけねぇ~ ...

R-factorが大きい場合(3~)

百聞は一見に如かずということでこちらをご覧ください。

GRAPPA R-factor:6 ACS:24

R-factorが6とかなり大きい間引き率ですので、このようなノイズが増加し、展開エラーが発生します。
明らかに右の画像がノイズ目立ちますよね?でも、装置に表示されているSNRは同じなんです。
POSでSNRを稼いでいるか、NEXで稼いでいるかの違いになります。

なぜこのような差が生まれるのか。
それは上記で述べてきたPOSによるk空間を密にサンプリングすることによる効果です。

POSを入れるとΔky:k空間の間隔が小さくなり、密にサンプリングされることで、
パラレルイメージングにおける展開処理の不正確さが緩和してg-factorが下がり、ノイズが減る。
いわゆる展開エラーが減ることになります。

この「展開処理の不正確さが緩和され・・・」のところ、わかりづらいなぁと思いましたので、自分なりにイメージつくように考えてみました。POSと展開処理のイメージということで、次へ進みます。

R-factorが大きい ➡ k空間を間引く ➡ SNRが下がる&展開エラーが増える

展開エラーが増える  g-factorが大きい ➡ POSを使うことでg-factorの上昇抑制

展開処理のイメージ

k空間でのお話です。下の図は同じ間引き率、つまり同じR-factorです。
しかし、k空間の間隔:Δkyが大きく異なります。

わかりやすいようにちょっと大げさにしてますが、これらの間引く間隔:Δkyが違う画像から、どれだけ元の画像を再現できるかというのが展開処理であり、g-factorです。再現しやすいほどg-factorが小さくなります。

実際にはk空間での処理ですので、このような実際の画像を再現するという処理ではないですが、イメージはつかみやすいかなと思います。

画像を比べてみると、確かに間引く間隔の狭い、右の画像の方が頭の中で元の画像を再現しやすいと思います。この「再現のしやすさ」がg-factor低下の要因、ノイズ減少の要因であり、POSの隠された効果です。

R-factorが小さい場合(~2)

GRAPPA R-factor:2 ACS:24

左がPOS100%・NEX1、右がPOS0%・NEX2です。
ん~あんまり変わらないですねw
ただ、POS100%の方は加算効果がないので、その分わずかに不利かなといった印象です。

まとめ

今回、POSが折り返し防止だけでなく、R-factorが3以上と高いときにg-factorを小さくしノイズを下げるといった趣旨の話をしました。

そもそもPOSはk空間を密にサンプリングし、k空間の間隔:Δkyを小さくすることで実空間のFOVを大きくし、折り返しアーチファクトを防ぎます。

このΔkyが小さいことでGRAPPAなどのパラレルイメージングにおける展開処理の不正確さが緩和され、g-factorが低下し、ノイズが減ります。

R-factorが2以下のときはPOSによるg-factor低下の効果は薄いです。

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ドドド
本職は放射線技師。仕事をしながら平日は投資、土日はサーフィン&家族とお出かけの日々を過ごす30代男性。サイドFIREを最終目標に資産形成中!