どうもべこです。
当直なんかをやっていると、tPA適応の可能性がある緊急MRIをお願いされることがありますね。
昔はなんのこっちゃ…とりあえず急いでる雰囲気は伝わってくるから急ごうくらいの知識でした。(←大丈夫かこいつ)
最近になって、MR認定を取ろうかな~なんて思いたち、問題を解いてみたところ、それに関する問題もあったのでせっかくなので備忘録的に書き残しておこう。これが発端でございます。
2020年時点での情報ですし、自分自身のためというところが大きいのでざっくりではございますが、ご容赦ください。
そもそもt-PAとは
組織型プラスミノゲンアクチベータ(tissue plasminogen activator; tPA)の略。アルテプラーゼという薬剤(商品名グルトバ)のことで、血栓を溶かす効果を持つ。
点滴による静脈投与で、0.6[mg/kg]の投与量とすることが脳卒中ガイドライン2019で示されており、10%は急速で入れ、残りを1時間かけて点滴する。
国内ではアルテプラーゼ以外のt-PA薬剤は認可が降りていない。
つまり、最強の血液サラサラ薬ってこと
t-PAの適応
脳卒中ガイドライン2019
いろいろありますねぇ、よく問題にされるとこあたりで言いますと
- 発症4.5時間以内であること
- 非外傷性頭蓋内出血の既往がないこと
- 急性大動脈解離がないこと
- 梗塞範囲が広範でないこと
ですかね。
DWI・FLAIRミスマッチ
上記のt-PAの適応で発症4.5時間以内という文言があります。毎回、患者さんの発症時間がわかるとも限りません。
ここで発症時間が4.5時間以内かどうか判断するのにFLAIR画像が有用です。
DWIで高信号 なのに FLAIRで変化なし
このミスマッチがあれば発症4.5時間以内である可能性があります。
つまり、t-PAの適応の可否を判断したい場合、DWIとFLAIRは優先的に撮像する必要があります。
また、出血の確認も必要なのでT2*もわすれずに。
TOFはカテーテルでの血栓回収の可能性がないなら必須ではない。が、撮れるなら撮りましょう。
脳梗塞がFLIARで分かるようになるまで4.5時間以上かかるってこと
t-PA適応外またはt-PA後の血栓回収
t-PA適応外またはその併用でカテーテルによる血栓回収となる場合があるので、当直などではアンギオ室の電源なども同時に上げておくとスムーズにことが進むと思います。
さて、血栓回収にもt-PA同様に制限時間があり、脳卒中ガイドラインでは発症後6時間以内を推奨しています。
発症6時間を過ぎたら血栓回収はやらないかというと、必ずしもそうではないようで世界では様々な試験がなされ、許容時間の延長が検討されています。
例えばDEFUSE 3試験では、脳梗塞には至っていない虚血組織を認める患者にのみ発症後6-16時間において、血栓回収を行うことで良好な結果が得られたと記述しています。
梗塞には至っていない虚血組織:ペナンブラとは
ペナンブラは「機能的には障害され、梗塞に至る危険がある虚血にさらされた組織であるが、再開通やその他の方法により救済可能な組織であり、救済されなければ新たに梗塞巣を形成し、それは時間とともに拡大する」と定義してる人がいます。これをどうやって診断するのか、それには灌流画像PWIが有用です。
DWIでの梗塞範囲 よりも PWIでもっと広い灌流異常範囲
このミスマッチがあればペナンブラが存在すると言えます。
これがDWI・PWIミスマッチか
t-PA投与開始後の管理
脳卒中ガイドラインに
「治療開始後の 24 時間は、血圧の管理や抗血栓療法の制限が重要である。」
脳卒中ガイドライン2019
とあり、24時間以内に抗凝固薬などを使用する場合は頭蓋内出血の危険性があるので事前にMRIやCTを撮っておくことが推奨されています。
第14回MR専門技術者認定試験問題_24
では以上をふまえて認定試験の問題です。
- 早期の脳梗塞部の多くは見かけの拡散係数(ADC)が上昇する.
- アルテプラーゼ(rt-PA)の適応選択に MRI を用いることができる.
- アルテプラーゼ(rt-PA)治療後の経過観察に MRI を用いことができる.
- 脳血管解離が疑われた場合でも拡散強調像で梗塞巣があればアルテプラーゼ(rt-PA)は適応である.
- 発症後 8 時間を超え 16 時間以内の急性期脳梗塞に対して血栓回収術を施行する場合は,灌流と臨床所見等のミスマッチを検出する必要がある.
さていかがでしょうか。
①はADCが低下しますので間違いですね。
②はいいですね。
③もよいと思います。
④は禁忌ですね。出血のリスクがあるので最強の血液サラサラ薬t-PAは使えません。
⑤は時間が微妙ですが、他が間違いなのでこれでしょう。
べこの回答:2.3.5