臨床

ECMO下での造影CTのメモ書き

最近はMRIチームなので、当直くらいでしかCTを触らないのだけれど、久しぶりにECMO(エクモ)つきのダイナミックCTを撮る機会があり、なかなかに難しい撮影だったので備忘録的に残しておこうと思う。

この記事で分かること

・ECMOの血流動態の基本
・V-A ECMOの造影CT
・V-V ECMOの造影CT

ECMO(エクモ)とは

日本語で【体外式膜型人工肺】
要は肺がダメになっちゃったときに、肺の代わりに酸素⇔二酸化炭素のガス交換の補助をやってくれる装置のこと。

大きく別けると2種類
①V-V ECMO
②V-A ECMO
がある。

V-V ECMO

肺の機能を補助するのみ。
VVの意味は静脈から脱血して、静脈に送血するということ。

V-A ECMO (PCPS)

肺の機能補助に加えて、心臓の機能も補助する。VAの意味は静脈から脱血して、動脈に送血するということ。日本ではPCPSとも呼ばれる。

V-V ECMOの造影CT

造影ルートを腕に取ったとすると、造影剤の流れは以下の2つの流れがあります。

腕→上大静脈→右心系→肺動脈→肺静脈→左心系→全身に

腕→上大静脈→下大静脈のECMOに脱血
→酸素化→上大静脈のECMOから送血→全身に

VVの場合は、肺がダメなだけなので心機能は普通です。しかし、下大静脈に設置された脱血管にいくらか造影剤が吸われることは確かですので、注意が必要です。

動脈相の撮影での注意点

個人的には次のことに注意して撮影に挑もうと思います。

①脱血管には側溝があることから、造影ルートは上肢にとる。
下肢からだと心臓にたどり着く前に側溝で吸われると思う。

②脱血管に造影剤が吸われるため、造影剤注入速度はなるべく速く、濃度は濃いものを使う。
20Gで4ml/s~あたり、ヨード量300とかよりも370を選択が吉か。

③プレップは必ず使用し、心臓を切るように設定する。

④心機能は正常なので、造影剤の到達タイミングは通常とあまり変わらないはず。ただ、ピークは低い可能性。だからこその②。

後期相の撮影での注意点

同じか、いつもよりも少しタイミングを遅らせるくらいか。しかし、人によって循環の程度が異なるので、撮影後に画像を確認し、後期相なら後期相の画になってるか考えることは必要。

V-A ECMO (PCPS) の造影CT

造影ルートを腕に取ったとすると、造影剤の流れは以下の2つの流れがあります。

腕→上大静脈→右心系→肺動脈→肺静脈→左心系→全身に

腕→上大静脈→下大静脈のECMOに脱血→酸素化
→大腿動脈のECMOから送血→大動脈弓部あたりまで逆流→全身に

しかし、VA ECMOを入れるほどの患者さんですから、その割と多くの造影剤がECMOのほうへ循環します。

肺動脈(動脈相)の撮影での注意点

V-A ECMOが入っている患者さんはECMOの方へ造影剤が流れてしまいますので、下大動脈のみのプレップを見ていると、送血管からの造影剤の逆流でタイミングを見誤ることがあります。

また、ECMOの脱血管には側溝があることや、小児などでは脱血管・送血管の位置が異なる場合があります。

個人的には次のことに注意して撮影に挑もうと思います。

①脱血管には側溝があることから、造影ルートは上肢にとる。
下肢からだと心臓にたどり着く前に側溝で吸われると思う。

②脱血管に造影剤が吸われるため、造影剤注入速度はなるべく速く、濃度は濃いものを使う。
20Gで4ml/s~あたり、ヨード量300とかよりも370を選択が吉か。

③プレップは必ず使用し、心臓を切るように設定する。
送血管からの逆流なのかどうか判断するため。

④可能であれば、一時的にECMOの脱血量を落としてもらう。
これが出来たら結構違うと思う。

⑤後期相(2相目)も組んでおく。最悪、動脈相が撮れなくとも全身に造影剤がいきわたっていれば肺血栓とのコントラストはつく。コントラスト強調したいなら低管電圧も考慮か。

後期相の撮影での注意点

動脈相が要らないなら、同じか、いつもよりも少しタイミングを遅らせるくらいか。しかし、人によって循環の程度が異なるので、撮影後に画像を確認し、後期相なら後期相の画になってるか考えることは必要。

極端な例ですが、昔、心臓を直モミしながら造影CTを撮影したことがあります。造影後90秒で撮影しましたが、動脈がギンギンで肝臓や腸管などが単純のようでした。循環がいつもと違う人の撮影するときは撮り終わった画像をサッと範囲だけ見るのではなくて、しっかり思い描いたコントラストに近づいているか確認しましょう。

まとめ

・ECMOとは体外の人工肺肺のみの代わりをするV-V ECMOと、肺+心臓の代わりをするV-A ECMO(PCPS)がある。

・VV ECMOでは下大静脈から脱血→ECMO→上大静脈へ送血が一般的。静脈Vから静脈V

・VA ECMOでは下大静脈から脱血→ECMO→大腿動脈へ送血&逆流が一般的。静脈Vから動脈A

・動脈相を撮影するなら、脱血管の位置を確認し側溝に吸われないようにルートを確保造影速度は速くかつ濃いものでプレップは心臓を切り予備のスキャンを組んでおく

・後期相は撮影タイミングをいつもよりやや遅め、撮影後に画像をしっかり確認すること。

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ドドド
本職は放射線技師。仕事をしながら平日は投資、土日はサーフィン&家族とお出かけの日々を過ごす30代男性。サイドFIREを最終目標に資産形成中!